「短時間」の基準は5社とも公開していない|FX5社の約款を条文で並べる

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「スキャルピングは禁止されているのか」「放置したら口座はどうなるのか」。この二つを調べると、業者ごとのまとめ記事がいくつも出てくる。だがその多くは、条文を一つも引いていない。

ここでは、国内大手5社の約款を開いて、同じ論点ごとに並べる。読んで分かったのは、5社は同じことを書いているようでいて、書いている場所が違うということだった。

結論:基準はどこも公開していない。違うのは、条項の置き場所だ

「短時間の連続取引」が何分で、何回からなのか。それを公開している会社は、5社中ゼロだった。
違うのは、その条項を「利用の制限」に置くか、「契約の解除」に置くかである。そして1社は、条項そのものを持っていない。

以下は2026年9月18日に各社の現行PDFを取得して確かめたものである。条番号は当日時点のもので、各社とも年に1〜2回改定するため、読む時点の版を各自で確かめてほしい。

5社を1枚に並べる

会社 速度・頻度の条項 置き場所 「凍結」の語 放置の条項
GMOクリック証券 オンライントレード取扱規程 第34条第1項(11) 利用の制限(別に約款第32条で解約) 0件 第35条(13)
DMM FX 約款 第7条第1項(10) 禁止事項(第7条第2項で凍結) 3件 第33条(11)
松井証券 FX取引規程 第22条第2項(2) 停止・制限 0件 無し
楽天証券 楽天FX取引規定 第21条(16) 契約の解除 0件 第21条(7)
JFX 存在しない — 1件 第35条(14)

根拠①:同じ「短時間」でも、置いている場所が違う

GMOクリック証券は、オンライントレード取扱規程の第34条第1項(11)に置いている。条のタイトルは「本サービスの利用の制限」である。

短時間または頻繁に行われる注文または取引であって、当社のシステムまたは他のお客様もしくは当社がお客様に提供する商品に対する当社が行なうリスクヘッジのための取引に影響を及ぼすと当社が判断した場合。

松井証券も同じ側である。FX取引規程 第22条第2項(2)、条のタイトルは「サービス利用の停止・制限」。

取引の方法如何にかかわらず、短時間における連続した多量の取引により、安定的で適切な取引価格の提示や当社のカバー取引の実施等、当社サービスの運営に影響があるまたはそのおそれがあると当社が合理的に判断した場合。

楽天証券だけが違う。楽天FX取引規定の第21条(16)に、ほぼ同じ内容が書かれている。だが第21条のタイトルは「契約の解除」である。

取引の方法の如何にかかわらず、当社が、短時間における連続した取引、インターバンク市場の混乱を招く取引、当社のカバー取引に影響を及ぼす取引、または、過度な取引等不適切な取引であると判断したとき又はその虞があるとき

もっとも、同じ規定の第22条(サービス利用の制限)は「前条第1項各号に該当すると判断した場合」と書いている。同じ列挙が、解除にも制限にも効く構造になっている。どちらが先に来るかは、条文からは読み取れない。

DMM FXは「禁止事項」という条に置いている。第7条第1項(10)。

短時間又は合理性に欠ける頻度で注文を繰り返し行う行為

そして、条項を持たない1社

JFXの約款には、「短時間」「頻繁」「頻度」「回転売買」「スキャルピング」のいずれも出てこない。全文を検索して0件である。サービス利用の制限を定めた第35条には15の号が並ぶが、そのどれも取引の速さや回数を理由にしていない。

4社は明文で挙げていて、1社は挙げていない。言えるのはこの差だけである。書いていないことは「止められない」という保証ではない。JFXにも包括的な号はあるし、第34条(17)には「適合性原則等その他諸法令に照らし、過度に投機的な取引であると当社が判断したとき」という定めがある。ただしこれは法令適合性の話で、速度の話ではない。

根拠②:「凍結」という語を使っているのは、5社中2社だけ

検索窓でよく使われる「口座凍結」という言葉は、約款の言葉ではない。6つの文書を全文検索した結果は次のとおりである。

文書 「凍結」の出現
DMM FX 約款 3件
JFX 約款 1件
GMOクリック証券(規程・約款とも) 0件
松井証券 FX取引規程 0件
楽天証券 楽天FX取引規定 0件

DMM FXの第7条第2項は、禁止事項に該当した場合の扱いをこう定めている。

前項の禁止行為が行われた場合、当社は事前の通知なく当該アカウントを凍結し、過去に遡り約定を無効とすることができるものとします。

同じ条の柱書には、該当するかどうかの判断は当社が行うと書かれている。JFXも「凍結」を1件使っているが、対象となる号は限定して列挙されている。

3社は、この語をそもそも使っていない。「凍結」は読者の言葉であって、5社共通の用語ではない。

根拠③:放置についても、期間を定義した会社は無い

「使わないまま置いておくとどうなるか」も、条文の置き場所が分かれる論点である。まず前提として、「休眠」という語は6文書すべてで0件、口座維持手数料に関する条項も存在しない(「維持手数料」「口座維持」「管理料」はいずれも0件)。

  • 楽天証券|第21条(7)「当社が定める期間において、楽天FXに係る取引、残高等を基準とした一定の条件を満たさないとき」。置き場所は契約の解除である。速度の条項(16)と同じ条に入っている
  • GMOクリック証券|第35条(13)「お客様の開設口座のお取引及び保護預り証券を含む全ての残高がなくなった後、相当期間が経過した場合」。残高が無くなった後という条件が付く
  • DMM FX|第33条(11)。GMOとほぼ同型で、こちらも残高が無くなった後の話である
  • JFX|第35条(14)「預託証拠金額を問わず、一定期間、ログインおよび口座の動き(入出金および取引)が確認できなかったとき」。残高があっても該当する点と、ログインの有無を見ている点が、他社と違う
  • 松井証券|該当する条項が見あたらない。FX取引規程にも、総合口座側の松井証券取引規程 第26条(口座の解約・23号)にも、長期間の未利用を事由とする号は無い。規程全体で「長期間」「一定期間」「休眠」「相当期間」「未利用」の語が0件である

条項を持つ4社は、4社とも期間を定義していない。「当社が定める期間」「相当期間」「一定期間」——読んでも、何か月なのかは分からない。

ここまでで、分かっていないこと

このページで確かめられたのは、どこに何が書いてあるかまでである。次のことは分かっていない。

  • 何分・何回でアウトなのか。5社とも公開していない
  • 「相当期間」「一定期間」が何か月なのか。4社とも公開していない
  • 該当したとき、事前に知らせてもらえるのか。条文から読み取れるのはDMM FXの「事前の通知なく」だけで、他社は書いていない

そして5社の条文には、ほぼ例外なく「当社が判断した場合」が付く。基準が公開されていない以上、読み手の側で線を引くことはできない。分かるのは、線がどの条に引かれているか、だけである。

なお、これらの点については2026年9月に5社へ同じ書式で照会を行い、4社から回答を得た。いずれも回答の掲載許諾は得られず、1社からは返信が無かった。そのため本ページには、各社の回答内容を一切掲載していない。

自分が使う会社の約款を、どこから開くか

会社 開く文書 見る条
GMOクリック証券 オンライントレード取扱規程 第34条/第35条
DMM FX 店頭外国為替証拠金取引約款 第7条/第33条
松井証券 外国為替証拠金取引(FX)取引規程 第22条
楽天証券 楽天FX取引規定 第21条/第22条
JFX 約款 第34条/第35条

論点ごとに、詳しく

このページは全体の見取り図である。それぞれの論点は、条文を最後まで追った記事がある。

条項を持たない会社が、1社ある

繰り返すが、明文が無いことは「止められない」という保証ではない。それでも、速度や頻度を理由とする条項を約款に持たない会社が実在するという事実は、業者を選ぶときの材料になる。約款を自分で開いて確かめられる。

JFX(MATRIX TRADER)公式サイトを見る

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本ページの条文は2026年9月18日に各社公式サイトの現行PDFから取得した逐語である。各社とも改定があるため、実際の判断は最新版の約款で行ってほしい。

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